「僕はね、未来から来たんだ」
意味がわからなかった。
私は携帯電話を握り締め、その少年をじっと見つめていた。みたところ小学校の低学年くらい。
彼はしわ一つない真っ白な服を着ていた。どこか不思議な雰囲気が漂うその少年は、たった今、この場所に降り立ったのだ。
それは、時をさかのぼること、5分ほど前。
そこには、5分後とほぼ同じ体勢の私がいた。
携帯電話を食い入るように見つめ、両手でしっかりとにぎっている。これ以上は携帯が壊れるんじゃないかと思うほど、がっちり握る。その液晶画面には、ありふれた別れの言葉が映し出されていた。
運命の恋だとか、赤い糸だとか。ドラマの中のような恋だったわけじゃない。
離れること事態がイヤなのか、ふられたこと事態がゆるせなかったのか……よくわからなくなってきていた。
それでもこれだけはわかっていた。
「もうめんどくさい……恋とか」
それからしばらく同じ体勢だった。
涙は流れないけど、抜け殻になったような、喪失感だけが残っている。
こんなんでおわっちゃうのかと、ため息をつく……
そして、どこからかあの声が聞こえた。
「こんばんわ」
ついに幻聴が聞こえるようになってしまったと、頭の中の隅っこにいる自分がつぶやいた。
それでも大半の頭の中の私は、この事態を理解しようと必死だった。
鍵も閉め切っていたはずの自分の部屋に、見ず知らずの男の子が突然現れたのだ。
「え?なん……誰?!」
「僕はソラ」
「え……ちょっとどこから入ってきたのよ!」
「どこから?」
少年はそれがさも当たり前だというように、さらっと言う。
「僕はね、未来から来たんだよ」
あっけにとられている私をよそに、少年はへんてこなことを言い出した。
「ねぇ、失恋したんでしょ?」
「は?」
「悲しいんだね。でも、もう恋なんてしないって思わないでね」
「な、なにを……」
少年はにっこり笑って、私の傍に歩み寄る。私の手をとると、両手でぎゅっと握り締める。
少年の手は暖かくて、一瞬ドクッとなった。
「今、僕はすっごく幸せなんだ。
大好きなお父さんとお母さん。二人ともすっごくやさしくて。
だから、もう恋なんてしないなんて思わないで」
「な……なんでよ」
「僕は未来から来た、あなたの子供なんだ」
こ……ども?
「あなたが幸せにならないと、僕も幸せになれない。あなたと僕は、出会えない。
だから、苦しくても頑張って。僕に会うために。
未来で、待ってるから」
そういうと少年は、私が瞬きをした瞬間消えていった。
あまりに急な出来事に、ただ言葉を失うだけだったが、後々考えてみると、妙にほほえましい。
失恋して、悲しくなって。一番に慰めてくれたのは、他でもない。
未来の私の息子、ソラという、真っ白な少年だった。
そして私は、ソラに会うために、また新しい出会いを求めて、歩いていこうと決心した。
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あとがき。
トップページに短編小説を載せるのが私の夢でした。
叶ったぞー!(´▽`)ノ”
この話しは「ソラと旅人と一輪の花」という小説をすんごい短くしたものです。
こんな感じで息子と出会った主人公は、息子に会うために、運命の人を探しに旅に出る!
みたいな、若干ファンタジーな話しでした。
でも無駄に長くなりそうだったので、こんな形で公開。
結構タイムトラベルとかそういう類いの話しが大好きで、よく想像ふくらませたりします。
でもまぁふくらませるだけです。
お手軽サイズな短編にまとめましたが、すごい難しい……;
この作品は今から何ヶ月か前に書いたんですが……
長過ぎちゃいけないなぁと思い、大分カットしました。
小説って難しいですね。
読んでくださってありがとうございました。
また新しい小話ができたら、公開したいと思います。
2007/10/13 パコ