雨降り屋
「よろしいですね?では、はじめましょう。」
「……………はい。……」
おばあさんは「こちらです。」と言って、
また奥の方へ私を案内した。
ナナはまだおばあさんに抱かれたまま。
ついていくしかない。
なにか見えてきた。
テーブルに、イスが二つ。
「どうぞ。掛けてください。」
「……………」
私は黙ってイスに座る。
おばあさんは向かい側のイスに座った。
「…こちらに、2枚のカードがあります。」
そういうと、おばあさんはテーブルの引き出しから、
2枚のカードを取り出した。
チェックの柄の、同じようなカード。
トランプみたいだった。
「2枚のうち1枚は『生』のカード。もう一枚は『死』のカードです。」
「………」
「名前の通り、『生』のカードを引けば、あなたのわんちゃんは賭けに勝ったとみなし、かえして差し上げます。」
「……」
「『死』のカードを引いた場合、あなたのわんちゃんの命は、永遠に私のものです。」
「……」
「よろしいですね?それでは…カードをお見せしましょう。」
おばあさんはカードを裏返した。
そこには、『生』と大きく書かれたカードと、
『死』と書かれたカードがあった。
「こんな事はないかと思いますが…いかさましようなんて思わない事です。もしいかさましてばれた場合、あなたの命も頂きます。」
「そんなことしません。」
「………それはよかった。」
おばあさんはカードをきった。
もう…どっちが『生』のカードかわからないくらい速く。
「では…どちらか選んでください。」
カードをテーブルの上に並べる。
どちらも同じようなカード。
これはもう…運にまかせるしかない。
「どうしましたか?」
「…いえ。」
「…悩んでください。あなたのわんちゃんの命がかかっているんですから。」
そういうことを…今言わないでよ。
てゆーかバカじゃないの?
こんなことが許されていいわけないわ。
こんなので…悩んでるのがバカらしい…
人の犬を…殺すなんて。
ウソに決まってる。
けど。
本当だったらどうしよう。
もし『死』のカードを引いたら?
ナナは本当に死んでしまうのだろうか。
「…右のカードにします。」
「…わかりました。本当に右でよろしいですね?」
「はい。」
私がそういった瞬間。
右側にあったカードが光り出した。
白い光。
右のカードは、ふわっと宙に浮いて、
裏返った。
『生』
私は『生』のカードを引いた。
雨降り屋
中編 完
あとがき
中編、ココで終了です。
思ったより長くなってしまったんで、
中編、後編にわけました。
1年ぶりくらいでしょうか;
お待たせして申し訳ない;;
後編も近々更新予定!
よろしくお願いします。
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