トランペットを吹く少年の物語






まだ暑い9月。

始業式も終わって、私は友達と一緒に食堂へ行くことにした。

久しぶりの再会に、つもる話もある。

ちょっと遅めのお昼ご飯。









食堂へ行く道すがら、見上げれば古い校舎の窓が見える。

まだがやがやしているその窓の向こう。

私はしばらくその様子を見続けていた。







友達が早く行こうとせかしたので、

私は窓から目を離し、食堂へ向かった。







校舎の窓の向こうに、懐かしい思いでを見た。







今年の夏は、暑かった。























『夏の大会まであと2週間』。

そう書かれた画用紙が部室に貼られたのは、

今から3週間ほど前のこと。





(そっかぁ…もうすぐ大会なんだ…)





私はのんびりそんな事を考えた。

同期の友達が言った。



「ね。今年はいける気がするのよ!2週間しかないんだから頑張ろーね!」

「うん。もちろん。」







私達3年生にとって最後の大会。

自称、夏の甲子園。

大会は目前で、夏休みに入ってからというもの、

一日も休まず練習練習練習…。

8月に入って、いいかげんみんな飽きてきてからの出来事。



またもう一度はちまきをしめ直して、

試合に臨む!





という部長のたくらみ。













「明日は試合だから、荷物先生の車に運んでねー…」

「はぁい…」



新入りの一年生が荷物運び。

といっても、新入り一年生はただ一人。

もちろん私達3年生も手伝うことになる。



代々我がソフトボール部は、部員不足に悩まされている。









私はボールがたくさん入ったカゴを持ち、

駐車場へ向かった。





日差しがガンガンと照りつける中、

私は持ちにくいカゴをなんども持ち替えて歩いた。



(なんたってこんなに暑いのよ…)





太陽にいいかげん休暇とれ!と言ってやりたい。

ギラギラ光る太陽は、私の肌を確実に焼いていた。



こちらも負けずにギラギラと太陽を見つめようと思い、

空をバッと見上げた。









「…♪……………♪♪」











何処からか音が聞こえた。

不思議な、吸い込まれるような、澄み切った音。





トランペットの音色。







「あ…」





見つけた。





4階。 校舎の窓を開けて、外に向かってトランペットを吹く少年が見えた。

きりっとしてて、背筋をピンと伸ばして。



その音は、空を割って天に届くほど奇麗だった。















涙が出そうになった。



音楽なんて、これっぽっちも興味ないし、

クラシックなんてもっての他だった私が。



あの少年の吹くトランペットで、

泣いた。

















急に演奏が止まった。



目を閉じて演奏を聴いていた私は我に返った。





急いで窓の方に目をやると、その少年はこっちが演奏を聴いているのに気がついたらしく、

慌ててトランペットをしまっている。







(えっ?ちょっとまってよ!)







もうちょっと…聞きたかったのに。





私は急いで荷物を置いて、

校舎の中へ入った。



階段を上り、息も絶え絶え。

4階の3年生の教室の前の廊下。

そこにあの少年がいるはずだった。





「あれ…」





もう少年はいなかった。

そこには文化祭の準備をしている生徒たちが数人。





「ねえ。ここに、トランペット吹いてる人いなかった?」



試しにそこにいた人たちに聞いてみた。







「え…?いなかったと…思うけど?」



え?















「そ、そっか。ありがとう。」







おかしい。

場所を間違えたのかな?



3階だったかな?













「ちょっと、理緒!ミーティングはどうしたの?!」





急に自分の名前を呼ばれてドキッとした。

声の主は、同じ部で、新友の夏希。



「あ!夏希…ごめん…ちょっと…」



「言い訳はあと!ほら!もうみんな集まってるんだから…」

「う、うん…」





私は夏希に引きずられながら、廊下をあとにした。

廊下が見えなくなるまでずっと見ていた。



たしかにあのトランペットを吹く少年はこの階の、あの廊下にいた。



誰かに見られてない。

おかしい話だけど…







どうしても脳裏に焼き付いて離れなかった。















----------------------------------------------------------

はい!オリジナル小説初めて見ました。
トランペットを吹く少年。
彼は誰なのか?
理緒は…わかったんでしょうか?


ゥシヲ。




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送