トランペットを吹く少年の物語






朝。

だるい。

はっきり言って部活めんどくさい。







まだ朝だっていうのにもう太陽がじりじりしてきた。

もう冬のあの朝の寒さが嘘のようだ。

夏は冬を恋しく思い、

冬になったら夏が恋しくなる。

まったく人間ってやつは…なんて思ったり、

結局秋とか春とかが丁度いいんだな。って思う。

極端に暑い日や寒い日に必ず感じることだ。



今日はそんな日になりそうだった。





昨日は遠征があったから、顧問の先生の車から荷物を出さなきゃいけない。

さらに面倒くさい。







私は誰よりも早く来てしまっていたので、

一人で先生のところへ行って車の鍵をもらいに行った。



行く道すがら。

ふと思い出した。





「…そうだ…ここら辺だったな…」





そう。

確かこの辺の校舎の4階にあの少年がいたんだ。

太陽が暑すぎて、太陽に文句言おうとしたら…

どこからかきれいなトランペットの音色が聞こえてきて…







「…♪……♪…♪♪…」









そう…



そんな風に……









「…ってえぇ?!」





ほんとに聞こえてきた!

どうしよう!



私は急いで校舎の4階の辺りを見た。





「あ…」









やっぱり…



トランペットを吹く少年の姿があった。

何度聞いても…っていうかまだ2回目だけど…



とってもきれい…









あ!聞き入ってる場合じゃない!

なんとしてでも今日はあの少年の正体をあばかなければっ!



私は思い切って、あの少年に声をかけてみることにした。



「…ね、ねえ!」



トランペットの演奏がとまる。



少年ははっと我に帰ったような顔になり、

下を…つまり私を見た。





「ねえ…あなた、なんていうの?!」



4階と地上との会話だ。

怒鳴り声みたいになっちゃった。



その声にびくっとした少年は、急に姿を消した。

というか、多分地面に座っちゃったんだと思う。



まだそこにいそうな気がした。





「あの!ごめんなさい…その…すごく…素敵な演奏だったよ!私…この前も立ち聞きしてて…涙が出るほど感動しちゃったから…」



「だから…その…あなたの演奏もっと聞かせてほしいんだけど…だめ?!」





とりあえず正直に言ってみた。















反応はなし。

まぁ…当たり前っちゃぁ当たり前か。

突然見ず知らずの女に「感動した」なんていわれたら…

そりゃ引くよな。

小泉さんじゃあるまいし。

…って古いか。















「理緒〜?どしたのそんなとこでそんなアホ面して。」

「…!」









な、なんだ夏希か…。









「あぁ…なんでもない。空がきれいだったからさ。」

「なに言っちゃってんの?きれいも何もないだろ。こんな太陽ぎらぎらで。目つぶれるよ?」





「……うるさいな。」









夏希には少年のことは内緒にしとこう。

どうせまたすぐ「男だ」なんだって騒ぎ出すんだから。



このことは、私だけの秘密ってことで。

そういうのも…いいと思って。



















「ね、ね、理緒!」

「んー?」



部活中の休憩タイム。

夏希が急に話しかけてきた。

暑さもだんだん強くなってきていて、

次から次へと滴り落ちてくる汗をぬぐいながらだった。





「あれからさ、調べたの。」

「なにおぉ〜?」

「理緒の好きな人のことよ!」

「は?」

「吹部のトランペットでしょ?」

「あぁ。そのこと?」

「ん。でねでね、吹部の子にメールで聞いてみたところ…」

「…うん。」



「トランペットに男はいないんだって。」

「…え。」

「トランペットは全員女なんだってさ。」

「うっそぉ〜?」

「ほんと。しかも今トランペット1年しかいないらしいよ?三年生抜けたからメチャクチャへたなんだってさ。」

「……」

「だから理緒の言ってたその人は…吹部じゃないってことになるよねぇ〜…」

「……そっか…そういうことになるよね。」



















とにかく…あの少年のことが知りたい。

あんなに素敵な演奏ができるなんて。

絶対只者じゃない。





絶対突き止めて…











いつかその演奏がずっと…

いつまでも聞けるような関係になりたい。





































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第三話。
深まる少年の謎。
次回その真相が…???


ナチュ。




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