空模様






第1話





この扉の向こうには

俺のような者を求めているやつがいる



家出して路頭に迷う少女

カプセルホテルに飽きたサラリーマン

終電を逃した女

ただ単に家に帰りたくない女



俺はそんな路頭に迷う子羊をあたたかに家に迎え入れる仕事をしている。

金さえ払えば無条件で家にいれ、

ベットを用意し、食事も摂らせ、シャワーも浴びさせ、バスローブも貸す。

ただ、金さえ払えば…だ。



一泊5万円。



インターネットを使えば即客が来る。

携帯サイトからもアクセスできて、いつでもどこでも寝袋を確保できる。

便利な世の中になったものだ。





18歳の俺には、職く場所もなければ働く気力もない。

楽して儲けたいと思ったところに思いついた商売だった。



これが結構もうかるもので、調子のいい時には3日連続で客が来て、3日で15万もの大金を手に入れた。

ただ、食事して、寝床を与えるだけで。

こんなに割のいい仕事はない。







訪ねてくるやつはだいたい決まっていた。



時々来るのはサラリーマン。

終電を逃した独身のサラリーマンは酔ったまま俺の部屋に泊まる。

食事もせずにベットにバタンキューだ。



次に多いのは柄の悪いOL。

化粧が濃くて香水の匂いがキツいやつが多い。

『ちょっと今日泊めてー』とタメ口でメールが来て、軽く食事して、勝手に眠りにつく。





一番多いのは不良少女、少年。

家出してきて行くところがない子供が訪ねてくる。

そういうやつはたいていが学校に行ってなかったり、

暴走族や暴力団関係者が多かった。

たいして怖いと感じる事もなかったので快く家へ招き入れる。





そして客のほとんどが「ワケあり」だった。

例えば親との関係がよくなかったり、

完璧に人の道をはずしている奴らだったりする。

親がいなかったり、親戚に預けられていたり、親戚の家で居場所がなくなったり。

そんな奴らに一晩でもいい思いで床につける環境を作ってやりたい…

金を得る目的の次にある俺の浪漫だった。















今日も携帯に連絡があった。



『掲示板で見かけたのでメールします。



家出してきたので泊まるところがありません。



かといってホテルに泊まるわけにもいきません。



一晩泊めてもらえますか?』









返事は決まっている。









『承ります。夜八時まで大森公園の赤いベンチで待ってます。黒のコートです。』















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第1話。
裏の世界の住人たちの物語です。

ナチュ。





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