空模様






第11話





しかし俺は自分の目がうつろになるのを感じた。

物事に対してこんなにどーでもいいと思ったのは初めてだ。



「えーと……なにがいいかな……」

「……」



「黒猫だから……クロっていうのもありきたりすぎですよね」

「……」



「じゃぁ英語でブラック?」

「……飯は?」



「え?」

「飯。俺の」





最低限の単語しか言わない俺にまたため息をつく菜蘭。





「ちょっと待っててください。今決めてるんですから」

「あぁーもうやってらんねぇ……寝る」



「ちょっとソウタさん!」

「あんだよ」



「なんなんですか、さっきから。ヤキモチですか?」

「……」



「あ!わかった!この子の名前、『おもち』ちゃんにしましょう!」

「……は?」



「空太さんが私にヤキモチ焼いた記念に……」

「……焼いてねーだろ」





菜羅はぶくっと餅のようにふくれて怒った。

俺はアホらしくなってベットに戻る。

どっかとベットに寝っ転がり、フンッと鼻で大きく息をした。



菜羅はかまわず、『おもち』に何か話しかけている。

その『おもち』はもうすでに菜羅を気に入ったようだった。



「おもちちゃん、ちょっと待っててね。今ご飯作るから……」

「ミャーン……」



『おもち』は俺には見せたことのないような鳴き声を出した。

猫なで声、猫かぶり。

ちっと小さく舌打ちをして、俺は目を閉じた。



















夢を見た。



夢なんて久しぶりに見た気がする。

今、妙にぼやけた、温かい場所にいる。

時折風が吹いて、前髪がふわっと浮いてはまた元に戻った。



遠くを見てみると……といっても近いのか遠いのか……全くつかめないが。

目を細めてみると、かすかに、白い影が見えたような気がした。

それはいつだったか、見たことのある光景で、なんだか少し怖いように感じられた。



その恐怖は、後ろからゾンビが追ってくるような恐怖でもなければ、

知らない森に迷い込んで、夜が近づいてくるような恐怖でもない。

その妙に静かな、温かい光景がいつか崩れてしまいそうな、 そんな恐怖にだった。







俺はその影を追いかけた。

影は俺から逃げるように遠ざかっていく。



右に曲がったような気がしたので、俺も一緒に右へ曲がる。

するとそこはどこかの町中の狭い路地裏で、真っ暗だった。

俺が最近までお世話になっていたところだ。

あのあたたかな場所から、一気に冷淡な道へ出た。



白い影を追いかけてきただけなのに。



そこからの情景は、言葉では上手く説明できない。

夢とはそういうものだ。

ただ、少しだけ言葉にできるとしたら、 一枚のコインと、笑い声。



それらが一瞬で辺りを駆け巡った。

俺は頭がくらくらしてきて、倒れ込んだ。



仰向けに。





最後に見た空には、飛行機雲が一筋。

青空を割っていた。





まるで俺に、「大丈夫か」と問いかけているように。













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第12話。
角を曲がるとそこには別世界が広がる

初花





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