空模様






第12話





「しゅー……コトコトコト……」



夢を見ていた俺は、懐かしい音に、不意にまぶたが持ち上がる。

そこはベットの上。

記憶が少しずつ蘇ってくる。

そうだ……まだ菜蘭がいるんだった……



「ん……」



フラっと起き上がり、手元を見ると、黒猫がそこにうずくまっていた。

さも当たり前のように、ずっとそこにいたように、静かに寝息を立てている。

いつもは可愛くない猫だが、このときばかりは少しだけ、愛おしい思ってしまった。



「あれ……起きました?」



菜羅が俺に気がついたらしく、トタトタとこちらへ向かってきた。



「……あぁ」

「フフ……おもちちゃんてば、エサを食べるなりすぐそこで寝入っちゃって。やっぱり懐いてるんですね」



「いや……そんなことねーけど」

「私ふられちゃったんですよー?やっぱり飼い主には勝てませんね」



ご機嫌の菜羅に、俺はまた背くようにして起き上がる。

直球にはなれていない。

「あ、ご飯できました……あの、有り合わせなんで、あんまりいいものじゃないけど」

「……」



「あれ……卵焼きなんですけど……中に色々入れてみました」

「いろいろって……なにを」



「んー……冷蔵庫にあったもの?」

「……全部?」



「できる限り」

「……食えんのかよ」



その言葉に姫は今度はご立腹のご様子だ。

急に立ち上がって俺を見下ろした。



「食べられますよ、失礼な!」

「はいはい。ちょっとそこどけ」



「あっ」



俺がベットから出ると、猫が「フギャ------」という奇声を発して起き上がった。

菜羅と俺はビクッとなって猫を凝視。

すると猫はフラフラとそこらを巡回して、またパタッと倒れた。

夢を見ているのか?寝ぼけていたらしい。



「フフッ……」

「クッ……」



俺たちはなんだか知らんが笑いあった。

なんだかおかしかった。











その夜は、なんだか温かかった。

ストーブもガンガンたいていたからというのもある。

だけどこの温かさは、そんな人工的なもんじゃないってことくらい、俺にもわかった。





菜蘭がそばにいて、猫も隣にいて、心が温まる。

俺は居心地良さそうに眠る猫のように、その日は目をつむった。













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第12話。
幸せはいつまでも続くわけじゃない

初花





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