空模様






第7話





お子様ランチが来た。



「お待たせしました。お子様ランチです…。」



無愛想な定員がお子様ランチを持っている。

笑える。







「ありがとうございます。」





少し目を輝かせた菜蘭。

ご飯の上に立っている旗を見つめて。



「…どうぞ」

「ありがとうございます」





まず最初に、ハンバーグを丁寧に切って、一口。

ご飯をフォークに乗せて、また一口。



野菜を一口。

コーラを一口。

お嬢様を思わせる完璧なテーブルマナー。



もともとテーブルマナーなんて言葉に縁はない俺だから、

「完璧」なのかどうかは定かではないが…





「おいしいです」

「無理しなくでいいよ。お前が毎日食ってるのとは格が違うだろ」



少し冷たく言い放つ。

イヤミっぽく聞こえただろうか?



「…あぁ…そうですね」

「……」

「でも、おいしいです。こっちの方が…楽しいし」

「……」



すっと笑う菜蘭。



「この旗、もらっていいですか?」

「…あ?」



「旗。だめですか?」

「…いや…いいんじゃない?」

「ホントですか?」



「あ、あぁ。」

「良かった。」







少し笑った。

白い歯が見えた。





「あの…空太さんは食べないんですか?」

「…いや…俺はいいよ。」



「え…でも…。」

「いいって。食べて。」





少し強い口調。





「はい。すみません。」









それから菜蘭はいろんな質問をしてきた。

年はいくつなのか、兄弟はいるのか、家族は何人か、

血液型、誕生日、趣味、特技、本は読むか、テレビは見るか、

音楽は聴くのか、どんな食べ物が好きか、嫌いか、足のサイズ、身長、体重。



ほとんど面接だった。





「最後の質問です」

面接官が言った。





「恋は…した事ありますか?」







「…恋?」





「はい。『レンアイ』です。本物の。」



「…本物……か。」

「はい。正真正銘の。」



「本物はないな。」

「…偽物ですか?」





「まぁ…そんなとこ。」





多少重い空気が漂う。

期待に添えなかったが…正直なところを言ったまでだ。





「そうですか…。」

「あぁ。」









ジュースはもう三杯目のアイスココア。

時間が経つのは早いもので、もう三時間近く話していた。





「私…あの漫画喫茶で素敵な恋のお話を読みました。」

「……。」



「色々な障害をくぐり抜けて、やっと一緒になれると思ったのに…男の人の方が死んでしまうんです。」

「……ベタだな。」





菜蘭は首を横に振ってからまた話しだす。



「…私はそうは思いません。女の人は、それを聞いて、大粒の涙をこぼしたんです。」

「………。」



「奇麗な涙でした。私も…誰かのために…あんな風に泣きたいって思いました。」

「…運命の人に死んでほしいわけ?」



「違いますよ!」

「はは…」





マジ切れ。

素直すぎて笑えてくる。



「………とにかく私は…そんな物語にあこがれて…勇気を出したんです。」

「……勇気…」



「『ここに来る』勇気です。」

「……。」



「私たちが出会えたのは、あの『恋の話』があったからこそなんですよ。」

「……。」



「すごいと思いませんか…?」

「………。」







大きな目が、俺の心を読もうと懸命に動く。

俺は黙秘を続ける。





「私はスゴイと思いました。」

「……そう。それは良かったよ。」





「はい。」









時計は十時半をさしていた。













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第7話。
恋物語か、否か。

初花





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