第1話




「夏乃…コーヒー入ったよ。」
「ん…。ありがとう。」
「いい家だね…。」
「うん。空気もきれいだ。」
「星も見える。」
「最高の家だな。」
「そうだね。」




夏乃は私の夫。
実は彼、大企業の社長。
23歳のとき、夏乃のお父さんが病気で亡くなったのだ。
それで2代目の夏乃があとを継ぐことになった。
もちろん会社は大反対。
『あんな若造に社長が勤まるもんか!』と。
それでも夏乃はこの1年がんばって、
なんとか社長をやってきている。

それは私と結婚して、2年目のことだった。



それからというもの、
夏乃は忙しく、わかってはいたものの、
私など相手にしてくれない。

相手にしないと言っても、
夜はきちんと帰ってくるし、
朝もちゃんと私の朝ご飯を食べてくれる。
数少ない休日には、
決まって私のそばにいて、
星の話、雲の話、大地の話など、
とても神秘的な話しをしてくれる。



それでも。
彼は気づいていないかもしれないけど。
私は満足していなかった。
私には趣味もないし、
これといって特技もない。
そんな私が夏乃の妻になれたのが不思議でたまらない。
夏乃がそばにいないと、
私はとても不安になった。
それを紛らわすものもなかった。
だからいつもそばにいてほしかった。


誰でもいいという訳ではない。
夏乃にそばにいてほしかった。
会社に出勤するとき、
夏乃がこのまま帰ってこないんじゃないか…
いつもそう思ってしまう。
夜、いつものように夏乃が帰ってくると、
心から安心する。
夏乃のいつもの「ただいま」が、
私を救ってくれる・・・・・・。



だけど私は不安だった。
夏乃が会社にいる間中、ずっとずっと。




いつしか、
それがストレスとなっていた。
いつもそばにいたいのに、
一緒にいられない。
こんなになるんなら、
いっそ出会わなければよかった。
そんなことを思ってしまう。
愛しすぎて、愛しすぎて。
苦しかった。
子供みたいなのかもしれないけど、


それが私の、
夏乃に対する愛の形だった…。






 

 

back top next

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送