第2話




喜夜(きよ)は僕の妻だ。
僕らは今から3年前に結婚した。
今では星のよく見える家を建てて、
二人で暮らしている。


「夏乃?」


喜夜が呼ぶ声がする。
透き通った声だった。
この地域は空気が澄んでいる。
澄んでいるだけ、喜夜の声は美しく聞こえる。

喜夜はよく歌を歌う。
とても信じられないほど奇麗な声だった。
僕はその歌によく助けられた。
僕が仕事が忙しいとき、
慰めてくれたのは彼女だった。
疲れて仕事から帰ってくると、
彼女は歌を歌っていた。

そして、彼女は僕が帰ってきたことに気づく。
振り向いて、いつもの「おかえりなさい」を、
いつもの澄んだ声で言う。

その声を聞いたとたん、
疲れが吹っ飛ぶ。
そんな喜夜と歌に励まされ、
僕は今も会社の社長という大仕事をなんとかやっている。






気のせいか、喜夜は最近元気がない。
結婚してすぐの頃は、
いつも笑顔が絶えなかった。
他の人から見れば、変わっていないなんて思うかもしれない。
本当に一瞬だから。
一瞬、喜夜は寂しげな表情を見せる。

その瞬間、それは朝だった。









朝、僕がいつものように、

「いってきます。」

というと、
喜夜はその瞬間だけ、
もんの一瞬だけ笑う。

「いってらっしゃい。」

と元気な声で、しかし少し寂しげに笑うのだ。
その笑みはとても小さくかったが、
確実に、喜夜の寂しさを表していた。
僕は喜夜の笑顔がよくわからなかった。
喜夜が笑っているのは、
本当に嬉しいからなのだろうか…?


もしかしたら、

寂しさを隠すための道具に過ぎないのかもしれない……






 

 

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