第3話
「……♪」
鼻唄。
私のクセだった。
いつの間にか歌っている。
でも。
普通の人より歌っている時間が長いだけだ。
歌を歌うことに理由なんてなかった。
そんな歌を、
夏乃は静かに、優しく聞いてくれる。
「それは…何の曲なの?」
「…自分で作ったの。」
「ほんとに?」
「うん。ほんと。」
「…すごい。」
夏乃はほんとにびっくりしたらしい。
最初目をまん丸に見開いていたが、
それがだんだんと優しい目になって、
私の大好きな夏乃の笑顔になった。
こんなに素敵な夏乃の笑顔を見れるなんて。
私は世界一の幸せ者だと思った。
「喜夜?」
「ん?」
「あのさ、今週の土曜日ね…。」
「………?」
「出張だって。」
「……」
「……」
「………出張?」
「うん。3日間、京都。」
「京都…。」
「大事な会議が開かれるんだ。」
「そっか。…京都か…。」
「うん。いいとこだ。」
「そうだね。…がんばって。」
「うん。もちろん。お土産買ってくるよ。」
「生八つ橋がいい。」
「わかった。」
「……」
「……」
「…すぐ帰ってきてね。」
「うん。すぐ、帰ってくるよ。」
「…いってきます。」
「いってらっしゃい。」
いつもの朝の会話。
やっぱり悲しかった。
それでも夏乃は行ってしまう。
昨夜の話聞いてからだからだろうか。
いつもより悲しかった。
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