第4話




「夏乃〜…」

喜夜が僕呼ぶ。

「夏乃。明日だね。」
「うん。」
「たのしみ?」
「…いや。緊張する。」
「…そんなに大切な会議なの?」
「成功すれば僕も社長として社に認められるし、失敗すれば…」
「天国と地獄ってやつかぁ。」
「そういうこと。」







今僕は、明日の出張のための荷造りをしている。
3日分の洋服、歯ブラシ、コップ、会議に必要な書類…。


「夏乃?」
「なに?」
「なんで夏乃は社長になったの?」
「…父さんに昔から言われてたからな。『大きくなったら、この会社はお前が継ぐんだ!』って。」
「お父さんの言いなり?」
「いいなりじゃない。いきなり『社長』だとはおもわなかったけど…でも好きでなったんだよ。」
「ほんとに?」

僕の妻の口癖だ。
『ほんとに?』…。
たいていそういう時は、
僕の言う事は『ほんと』だ。

「ほんとだよ。」
「そうなの?…小さい頃、夢とかなかったの?」
「…仮面ラ○ダー。」
「ふふっ…なれない事もないわ。」

喜夜が清らかに笑う。
いや、シャレではなく、
清らかに笑ったのだ。

「でも…正義の味方は大変だな。」
「…なんで?」
「いつも守ってやらなきゃ行けないんだ。…たくさんの人を。」
「…そっかー…。」
「いつでも勝たなきゃいけない。正義は必ず勝たなきゃいけないんだ。」
「…そうだね…。大変かも。」
「うん。大変だよ。」




「でも、夏乃はいっつも勝者だよ。」
「……なんで?」


「夏乃には負けた。私をたくさん苦しめるの。」

「……………。」

「…夏乃を愛しすぎて…。時々だけどね。苦しいの。」












「…それは僕も同じだよ。」

「夏乃も苦しいの?」
「人間、誰でもそうだよ。苦しみ方がそれぞれ違うだけ。」

「じゃぁ…夏乃はどうして苦しいの?」


だんだんと喜夜の顔が曇ってくる。


















「……喜夜と同じ類いの苦しみだよ。」







「…よかったー…。」
「当たり前だろ。」























話しているうちに、
荷造りが終わった。

「よし。後は寝るだけだな。」
「うん。明日早いんでしょ?」
「5時起き。」
「うっわ〜。」
「大丈夫だよ。喜夜は寝てていいから。」
「なんでよー?」
「起きれる?5時。」
「起きれる!」
「朝ご飯だったら僕が作っとくから。」
「大丈夫。私が作る。」

「……わかった。頼むよ。」
「うん。」



















こうして僕たちの金曜日は、
ゆっくり、過ぎていった。
















 

 

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