第8話




「社長、明日の予定ですが…」
「あぁ…」



「全て…キャンセルとなりました。」

「…え?」





「明日は食事会が入っていたのですが、取引先の方がキャンセルしてほしい…と。」
「……そうか…。」




「………………。」
「………………。」








「…社長。」
「…ん?」
「あの…失礼かとは思いますが…。言わせてください。」
「なに?」



「…あの電話さえかかってこなければ、会議はスムーズに行われたはずです!!」
「その事か…」
「今からでも遅くはありません!幹部達にわけを話して…」
「…無駄だよ。取り返しのつかない事だ。」
「奥様は何を考えていらしたのですか?!大事な会議と伝えたんですよね?!」
「やめてくれ。悪いのは僕なんだ。電源を付けっぱなしにしてたから。」



急に何を言い出すかと思えば。





「…心配してくれるのは嬉しいけど…。大丈夫だよ。」
「大丈夫なはずがありません!このままでは社長は…社長ではなくなってしまいますよ?!」
「…覚悟してるよ。」
「なぜいつもあなたは…!全て自分で背負い込まないでください!」
「いいんだ。」
「よくありません!社長は奥様の前で無理をしすぎです!…奥様が…奥様が貴方を苦しめている!」
「そんな事はないよ。」
「あります!」






「僕の妻を悪く言わないでくれ!!」


「あ……すいませ…」

重く、少し長めの沈黙。









「でも…無理だけは…!」
「…………」
「無理だけはしないでください…!」


「…ありがとう。」



秘書は僕の心配をしてくれたみたいだ。
心配してくれるのは嬉しい。

だけど、
取り返しのつかない事をしてしまったのだ。



もう。




どうしようもなかった。












 

 

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